硲伊之助美術館ご愛顧の皆様へのお知らせ

拝啓

皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。また日頃よりご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、硲伊之助美術館は1994年の開館から28年が経ちました。この間、1年ごとに展示替えをする常設展で、硲伊之助作品を紹介してきました。また美術館友の会会員を募り、その会費によって硲伊之助作品を購入し、所蔵作品を充実させてきました。さらに本年で第49号になる会報を発行し、ほぼ年1回、後援会などの催事を行ってきたところです。
本年4月21日に海部公子が他界したことで、美術館活動にも一つの転機が訪れようとしています。それは主として後継者問題で、遅かれ早かれ直面することでした。
後継者は師と弟子の関係の中でつくられ、その志は師から弟子へと伝わっていくものですが、弟子が師から学び取るしかないものです。それは内弟子として、一つ屋根の下で師と寝食を共にすることでしか学び取る他ないものと考えています。
しかし今の世にあって、この内弟子制度が難しいということは重々承知しています。九谷吸坂窯は例外的に生きていきたいという思いはありますが、現時点で候補者がおらず、また共同生活による弟子の育成が困難ということであれば、後継者の断念も視野に入れなければならないと判断しました。
その場合、九谷焼制作にかかわらなくても、どなたかに現在の工房兼住居の茅葺き古民家で暮らしながら、美術館の管理や、来館者の案内をしてもらうことで、この九谷吸坂窯を継承していくことも一つの方法だと考えています。
いずえにしても硲伊之助作品、そして古九谷について理解し、共感を持てるかどうかが大前提になります。そして作品そのものにとどまらず、日本の美術、文化という広い枠の中で理解につながってほしいのです。
つきましては、以下の二点について、皆様のご意見やご感想、ご提案、また後継者候補について何らかの情報があれば、お寄せいただきたいと思います。
①硲伊之助美術館、九谷吸坂窯の今後の運営のあり方について
②制作者以外で、工房兼住居に暮らし、美術館の管理も行う人を募ることについて
(その場合、私は別の場所で暮らします。土地や他獲物は私が所有したまま、無償で住居を貸与します。個人事業者やテレワークが可能な人等が想定されます)
なお、後継者問題と同時に、土地と建物(美術館と茅葺き古民家)、そして硲伊之助作品を、しかるべき公的機関に寄贈することも、今後の課題と考えています。
お問い合わせページまたは当館メールアドレス(hazamamusium@gmail.com)まで、一文をお寄せくださいましたら幸いに存じます。突然のお知らせになりましたが、何卒、よろしくお願いいたします。
時節柄くれぐれもご自愛くださいますうように。

敬具

2023年4月

硲伊之助美術館館長・九谷吸坂窯主宰 硲紘一
硲伊之助美術館運営委員会