作品解説 油彩「パオロ君」

本作品は硲伊之助57才の時の作品です。
モデルのパオロ君は当時4才。幼い子供にずっと動かずにいるのは大変だったでしょう。画く間は母親のフミコさんがずっとそばにいてパオロ君に話しかけていた。
ところが、フミコさんはこの作品が画かれたその時に白血病を患い35才で急死。母親の元気だった姿をあまり覚えてないパオロ君は硲伊之助作「燈下」の複製画を額に入れ身近に置いていたといいます。

概報のとおりパオロ君ことパオロ・ピアチェンティーニ氏(ローマ大学教授)は今年の6月27日に10年ぶりに来日。他のフミコさんを画いた作品「アンゴラのセーター」や「P夫妻像」を見て回りました。とくに氏にとって初見となる「P夫妻像」は新婚時代の両親の姿にしばし見入っている姿が印象的です。

作品名パオロ君
材質油彩
制作年1952
寸法80.3x65.1cm

作品解説 油彩「P夫妻像」

戦後間もない頃の作品。
良質の絵具が入手できたのかどうか、まず気になりますが…P夫人のブラウスも色彩的なものがなかったのかもしれません。
P氏の上着(淡いピンク系)、ネクタイ(赤)、シャツ(淡い灰青)に合う、例えば黄系、紫系のブラウスがあって、それを身に付けていれば全体の感じが相当違った作品になったと思います。
そのような終戦まもなくという時代の制約の中で、色彩の調和を追求した作品と言えます。

作品名P夫妻像
材質油彩
制作年1946
寸法70.0x60.0cm

また2014年5月27日、イタリアはローマ大のパオロ・ピアチェンティーニ教授(Prof. Paolo Piacentini)が来館されました。
当作品のモデルとなった夫妻の長男でもある氏はこれまで数回当館へと足をお運びいただいておりますが、このP夫妻像を観るのは初めて。幼い頃に母を病気で亡くしたため、記憶にある痩せた母の姿と絵に描かれた健在だった頃の母との違いに感慨深げに作品を観ておられました。

当作品、そしてパオロ氏が4歳の時にモデルとなった「パオロ君(1952年制作)」は現在、硲伊之助美術館にて展示中です。
みなさま是非お越しください。

作品解説 油彩「硲伊之助像」

夏の軽井沢だろうか、明るい陽光の中、50才前半の硲伊之助を描いたのは弟子でもあった石塚富美子(F.ピアティエンティーニ)さん。
対象を大きく掴み、簡潔に仕上げている。

作品名硲伊之助像
材質油彩
制作年1947頃
寸法94.0x78.0cm

本年度の常設展は彼女に関連した作品を5点展示しています。是非とも足をお運びください。