九谷吸坂窯展は、九谷焼作品を主とした展示会です。九谷焼は石川県に陶石が採れたことで起こりました。磁器に色絵付したところに特色があります。九谷焼の始まりは江戸初期(約350年前)で、その頃につくられたものを古九谷といいます。
私達の師匠、硲伊之助(1895~1977)は東京本所向島に生まれ、本郷浅嘉にアトリエを構えていました。若い頃から画壇の第一線で活動(例えば第1回、第5回二科展で二科賞を受けています。)フランスにも長く留学し、マテスに師事し、本格的な油絵制作に取組んできましたが、日本の美術にも 強い関心を持ち、江戸時代の木版画(浮世絵)、主として春信、歌麿を研究し、制作しています。
浮世絵はヨーロッパの印象派の画家達に影響を与えましたが、それは浮世絵版画がもっている絵画性においてです。硲伊之助は晩年古九谷と出会い、九谷焼を制作しますが、その古九谷にも浮世絵版画に通じる絵画性があります。油絵、日本画にもその点で通じます。浮世絵版画、色絵磁器、日本画、油絵、それぞれの特徴をもっています。絵画性とは何か。すぐれた作品に共通することは、一言でいえば「色彩の調和がある」ということです。
私達は、古九谷を指標とし、それを継承せんとして制作しています。展示会をご覧いただけましたら幸いに存じます。